養育費の支払いが滞ったら
養育費の強制執行
厚生労働省によると、実際に養育費を受け取っている母子家庭は、全体の2割程度のようです。
約8割の父親は、養育費を支払っていないことになります。
転職して給料が下がったとか、生活環境の変化により支払いが難しくなったのであれば、養育費の減額を申し出るという手段もあろうかと思いますが、生活が困窮しているわけでもないのに支払いをやめてしまう父親も少なくありません。
万一、養育費や離婚給付の支払いが滞った場合には、その支払いを確保するための制度としては、履行勧告・履行命令・強制執行などがあります。
履行勧告・履行命令については、家庭裁判所が関与した件(審判や調停など)でないと利用できませんが、強制執行認諾条項を入れた公正証書で取り決めをした場合には、直ちに強制執行という方法をとることが可能です。
強制執行をする場合
強制執行認諾条項を入れた公正証書により強制執行をする場合には、
①公正証書の正本に、執行文の付与を受けること。
②公正証書の謄本を、あらかじめ強制執行を受けるべき債務者に送達し、その送達証明書により執行機関に証明できること。
の2つの要件が必要です。
まずは、公正証書を作成した公証役場で、〝執行文の付与〟と〝送達証明書を発行〟してもらいます。
執行文の付与とは、公正証書の正本に『執行文』(〝強制執行することができる〟という文言が入った書類)を付けてもらうことです。
送達証明書とは、相手に債務名義の謄本が送達されたことを証明する書類です。(公正証書を作成したときに、同時に送達する公証人もいます。)
事前に公証役場に電話して必要書類を聞き、予約を入れた方がいいでしょう。
強制執行できる財産
強制執行できる財産には、
不動産(土地や建物)
動産(不動産以外の家財等)
債権(給与や預貯金等)
があります。
相手が働いており、一定の収入がある場合には、給与の差し押さえが一番確実です。
一度不払いがあった養育費については、将来支払われる分まで含めて差し押さえ対象とします。
原則として、給与額の2分の1までを上限として差し押さえが可能です。
給与の差し押さえをすれば、毎月の給与から継続して養育費を回収することができます。
失敗しない~養育費の書き方~
こういった強制執行の特例を適用するには、債権の性質が明示されるよう明確な表現を使う必要があります。
『養育費及び生活費補助』といった記載であると、養育費の部分と財産分与の部分の金額が特定できません。
又、『養育費及び学費』といった記載は、『学費』のすべてが養育費の性質を有するのかということに疑義が生じるおそれがあり、好ましくありません。
☛ポイント
公正証書で強制執行をする場合には、公正証書の文面だけで、『子1人についての養育費の金額と期間が特定されていること』と、『内容がはっきり読み取れること』が必要です。